フランス演奏旅行レポート☆Paris篇☆
新潟・フランス協会パリ支部&新潟日報社欧州国際交流拠点
開設1周年記念演奏会
史佳、4度目となるフランス公演の日がいよいよやってきた。
9/22、新潟空港より出発し、ソウル仁川経由でパリへ。
一行が現地入りしたのは、夜の19時すぎ。
空港からホテルまでは専用車にて移動。
再び降り立ったパリの夜景は、史佳の心にどう映ったであろうか。
窓越しに見える横顔に、心の中までは映してくれなかった。
<過去のフランス公演>
2002年5月 フランス•パリ公演 フランス日本大使館公邸、フランス文化センター
2009年11月 フランス•ナントオペラ座演奏会
2011年12月 フランス•パリ ルーブル美術館LEDライティングアップセレモニーナポレオンホールレセプションパーティー記念演奏
9/23日(火曜)
「プルルルル」ホテルのモーニングコールと共に迎えたパリの朝。
朝食はやはりパンにフルーツ、卵にハム、チーズと、いかにもだ。
しかしながら史佳は米派なのである。
彼のみなぎるエネルギーは、新潟のお米「コシヒカリ」から生まれているといっても過言ではない。
するとどうだろう。お味噌汁と白米が並んでいるではないか!!
さすがに「コシヒカリ」ではないだろうが、美味しく炊かれた白米。
フランスに来ても、史佳の引きの強さは衰える事を知らないようだ。
この日、午前中は専用車にてパリ市内観光。
「ショイヤー宮、シャンゼリゼ通り、エッフェル塔」など、パリの代名詞を堪能。
足早に観光を済ませ、ホテルに戻るや否や、今回の真の目的、演奏会の時間が迫る。
夕方17時、いよいよこの時が来た。
ホテルは「ノボテル」内バンケットにて、式典・小林史佳・高橋竹育三味線記念演奏。
有意義な朝からは一変、一気に集中力を高める。
演奏者として気になる事の一つとして、環境がある。
どういう会場なのか、広さは?床はフローリング?カーペット?音の反響は?
などなど、演奏だけに集中できない場合も多い。
ましてはここはフランス。日本ではないし、言葉の壁もある。
16時から軽くリハーサルを兼ねての音出し。
いつものように調弦から始める史佳。
すぐさま今日の環境はなかなか厳しいことを理解する。
床が一面絨毯の為、音が吸収されてしまい、とてもデッドな状況なのだ。
音の反響が無く、三味線の響きがなかなか得られない状態であり、
ましてや人が入るとさらに音が吸われてしまい、環境はさらに悪くなる。
私ならとても不安になるが、史佳の表情からはそういった不安要素は全く見られなかった。
逆に、この状況でも最高の響き三味線を弾いてやろうといった、強い意気込みを感じさせるオーラを感じた。
今回の演奏曲目、彼はどうしてもやりたい曲があった。
それは3年前、パリルーブル美術館にて演奏した、史佳のオリジナル曲「宇宙の花」である。
この曲は、作曲家・長岡 成貢氏が史佳の為に書き下ろした曲で、
愛をテーマにした壮大な広がりのある曲である。
自分の大切な人を想って聴いてもらいたい曲である。
3年前のあの日、史佳はルーブル美術館で出来立てのこの曲を世界初演していた。
3年の月日が彼の三味線を更に研ぎすまし、この曲のテーマである「愛」が壮大な広がりとなり、
聴く人の心に、今までよりも大きな感動を与える事となるであろう。
時刻は17時。
白いテーブルクロスに奇麗に並べられたスプーンやフォーク。
会場は1周年を祝うにふさわしい準備がされていた。
やはり史佳といえば和装ではないだろうか?
真っすぐに伸びた姿勢の良さが、彼の三味線に対する真っすぐな姿勢を表すかのようだ。
大きな拍手で迎えられた史佳は、まずは独奏「三味線じょんから~津軽よされ節」をメドレーで披露した。
リハーサルで確認した通り、環境は決して良いものではなかった。
しかしなぜだろうか、気迫とでも言おうか?
予想していたものと随分違ったものがそこにはあった。
史佳の左手と右手の織りなす技は、三味線と心技一体となり、
過酷な状況をも打ち砕く強い「音」となって出ていた。
かなりの集中力と精神統一があった事はいうまでもないだろう。
会場にいた人たちが全員、史佳の音を静かに聞き入る。
一瞬たりとも気持ちにブレを見せない独奏は圧巻であった。
また、会場の空気を一瞬で自分の物にする説得力のある演奏は、
見る者、聴く者の心を掴んで離さないのだ。
軽く会釈をしたのち、次曲、新潟高橋竹山会(この日は4名)と、
それを率いる高橋竹育(史佳の母であり師匠である)と合奏、「綜合曲」を披露。
この綜合曲をいうのは、初代高橋竹山師が、津軽三味線の独奏曲として、初めて作曲した曲である。
今の津軽三味線の独奏スタイルを確率した歴史的な曲であり、また名取りの曲でもある。
史佳を含めた5人での合奏。
やはり一斉に5本の三味線が鳴ると、迫力がでるものだ。
史佳と高橋竹育。この2人が軸となり、合奏を纏める。
独奏とはまた違った気迫を感じる合奏。
要所要所で入るかけ声に、また緊張感を感じる。
3曲目は、親子競演にて、津軽あいや節。
この曲は、史佳の母であり師匠である高橋竹育が、一番大切にしている曲である。
この親子競演、本当に見る度、聴く度、そのプレイに納得させられる。
二人とも全く手元を見ないし、お互いの顔も全く見ず、ただ真っすぐに視線を前に向けている。
なのに、息がぴったりで、どうしてその間がわかる?!というように、まさに親子にしか出来ない演奏なのだ。
そしてこの日のあいや節はいつもにも増して、すばらしかったように感じた。
このシチュエーションだからなのか?
いや、そうではない。
そこには国境を超えても心を動かす真の技と、親子の絆があった。
4曲目はまた新潟高橋竹山会との合奏「津軽じょんから新節」。
この曲は、津軽三味線で一番ポピュラーであり、早弾きの醍醐味を体感できる曲である。
今回史佳のソロパートの箇所に、パーカッション松井リカが加わっての初試みであった。
5本の三味線の合奏から、史佳の三味線と松井リカのリズムが激しく絡み合い、再び合奏へと戻る。
最後の回しの合奏はリズムも入り、また今までとは違った雰囲気となり、会場は多いに盛り上がりを見せた。
5曲目は史佳独奏「秋田荷方節」を、パーカッション入りで披露。
右手のバチが一定のリズムを刻んでいき、非常にテンポ感のある曲である。
リズムがはいることにより、とても聴きやすく感じる上、二人の息のあったプレイが見物であった。
最後の1音がぴったり合った時にはもう鳥肌がでたほどである。
ここで一旦ステージを移動して、いよいよ史佳オリジナル曲の演奏へと移る。
和装から洋装へと着替えをし、また違ったテイストで登場した史佳。
史佳といえば和装と言ったが、結局の所、洋装もいい。
6曲目は、冒頭でも説明した、「宇宙の花」
古典の曲とは全く違い、バイオリンや鍵盤、ベースやドラムといった現代的音楽に三味線の音を交えての演奏。
この曲、今回演奏する事に特別なこだわりを持っていたが、彼の心中はどうであっただろうか?
演奏中は何を思っていただろうか?
誰を想っていただろうか?
3年目とどう違った手応えを感じただろうか?
特別な想いが込められた曲は、やはり聴く人にも伝わるのでしょう。
この曲で多くの人が心動かされ感動したとおっしゃられていた。
また演奏中、丁度夕日が沈む時間帯と重なり、壁一面の窓からは、オレンジ入色の光が暖かく差し込み、
とても曲とマッチしており、すばらしい演出効果にもなっていた。
ラストはこれも史佳オリジナル曲「桃花鳥」
史佳が作曲したこの曲は、37歳という若さで亡くなった先輩を想って作った曲である。
大空に羽ばたくトキをイメージし、心の中にはいつもその命が輝き続けているというメッセージを込めている。
後から知った話だが、彼は昔、涙でなかなか演奏できなかったらしい。
今はようやく泣かずに演奏できるようになったらしく、どれだけの思い入れがある曲かがよくわかる。
悲しい曲かと思われそうだが、テンポの良いリズミカルな曲で、
大空に羽ばたくトキのイメージがそのまま曲になったかのようである。
盛り上がりをみせる中盤では手拍子が起こり、立ち上がって踊る人や、手をあげて踊る人も出て、
会場が一体となり、演奏が終わる頃には大きな拍手と歓声に包まれていた。
こうしてフランス・パリの記念すべき演奏初日が幕を閉じた。
過酷な環境にも左右されない演奏は、彼の間違いない技と、心の強さ、
そして伝えようとするその心の現れではないだろうか。
残すは最終日のナントにての演奏。
お楽しみに。。。つづく。